エネルギー工学分野

目次
熱・流体が関わる現象の解明 サーモグラフィとレーザによる熱流体計測 環境にやさしいエンジンと新燃料 複雑流動現象のコンピュータシミュレーション 自然流体エネルギの有効利用に関する研究 安全で安心な環境を守るエンジンの基礎研究

熱・流体が関わる現象の解明

松村 研究室

沸騰現象を利用した熱移動の促進や、高い熱輸送特性を持つ熱デバイスの開発など、本研究では目に見えない「熱」や「流体」の流れを広く研究対象としています。とりわけ、水は安価でかつ安全な流体で、「水」を「水蒸気」に変換することでたくさんの熱を運ぶ優れた媒体にもなります。本研究室では、こうした優れた性質を持った水をベースとして、様々な条件での効率的なエネルギー変換・輸送方法を実験的に調べています。また、地元の企業や研究機関とも積極的に熱利用に関する共同研究を行っています。


垂直なガラス管の中での沸騰現象

サーモグラフィとレーザによる熱流体計測

稲垣・李 研究室

我々は、赤外域サーモグラフィと可視域高出力レーザをハイブリッド化した光画像処理熱流体計測システムを独自に構築し、様々な環境において誘起される乱流や遷移現象などの複雑な熱流動現象の解明に取り組んでいます。サーモグラフィは、対象から発せられる熱エネルギを感知し、その表面温度を非接触に計測する手段です。複雑な形状を有する温度場をリアルタイムに計測できます。また、熱エネルギ有効利用の観点から様々な相変化蓄熱物質の物理・化学特性も調べています。


サーモグラフィーから取得した気液界面の熱流動現象(温度パターン)

環境にやさしいエンジンと新燃料

金野 研究室

石油や原子力に代わる新エネルギーをベースにした新しい燃料の開発と、それらを用いた高効率で有害排気成分の出ない新燃焼方式エンジンの研究を行っています。DME(ジメチルエーテル)は天然ガスや石炭の他、バイオマスや廃棄物から安価・大量に合成できる燃料です。圧縮着火が可能で燃やしたときに煙や硫黄酸化物を全く出さないので、高効率なクリーンディーゼルエンジンが実現できます。この他、各種バイオ燃料やHCCIエンジンの研究を行っています。


日本で初めてDMEの運転に成功したエンジン

複雑流動現象のコンピュータシミュレーション

田中(伸) 研究室

近年、熱流体に関連した「ものづくり」においてコンピュータシミュレーションが注目されています。本研究室では市販の流体解析コードでは解析が困難な複雑流動現象(混相流、生体流動、原子炉流動、海洋流動など)を対象として、粒子法やCIP法といった数値流体解析(CFD)の最先端手法を用いたシミュレーション・コードを独自に開発し、現象解明や工学的応用に活用しています。また、そのようなコードの機能検証のため、簡単な実験も行っています。


赤血球の血管内の挙動シミュレーション

自然流体エネルギの有効利用に関する研究

西 研究室

近年、環境問題やエネルギ問題が顕在化し、風・水力などの自然流体エネルギの有効利用が期待されています。風・水力など流体の持つエネルギから発電機等を駆動するための機械的エネルギを有効に取り出すには、高効率かつ信頼性の高い風・水力タービンが必要不可欠となります。当研究室では、風・水力タービンの高性能・高信頼性化の実現を目指し、その内部の複雑な流動現象の解明や新技術の開発に取り組んでいます。


新型水力タービンの内部流動現象

安全で安心な環境を守るエンジンの基礎研究

田中(光) 研究室

環境を守るという点から、新しいバイオ燃料の燃焼法とエンジン排気中の環境負荷物質の新たな計測手法及び低減手法を研究しています。現在は、新しいバイオ燃料である、“フラン類”をエンジンに適用できないかを考えています。フラン類は食料と競合しないセルロース類から触媒を用いて精製でき、環境に優しい燃料です。また、自動車排気には亜酸化窒素やアンモニアなど、未規制の環境負荷物質が含まれており、レーザー計測手法を応用したそれらの計測法の開発も行っています。この他、二酸化炭素の安定同位体の計測法や、PM2.5の基となる超微小粒子の排出低減法についても研究しています。


自動車排気の計測の様子、及び近赤外線レーザーを用いた排気計測装置