Last up date 2002.11.30
ジメチルエーテル(DME)は21世紀を担う新燃料として様々な分野から注目されています。その利点として、
1.多くの資源からの製造が可能
2.安価に製造できる
3.汎用性がある
4.人体および環境に対する安全性が高い
など、多くの利点を有する燃料です。燃料としての主な特徴は、
・沸点が低く(-25℃)、常温常圧で気体である
・LPG同様、数気圧で液化する
・含酸素燃料であるため、排出ガス中に粒状物質(すす)は含まれず、無煙燃焼する
・セタン価が高い(55以上)
・低発熱量は軽油の約7割程度である
・粘度が軽油よりも低い
・潤滑性に乏しい
・金属への腐食性はないが、エラストマ(ゴムなどのシール材)と反応する
などが挙げられます。(詳細は下記の燃料性状の比較をご覧ください)
DMEは分子構造が比較的単純なため、多くの資源から製造可能です。
@天然ガス
A炭層ガス
B石炭
Cメタンハイドレート(シャーベット状のメタンの水和物)
D廃棄物(一般廃棄物などのガス化溶融炉生成ガス、廃棄プラスチックなど)
Eバイオマス(含蓄糞尿など)
DMEの製造は合成ガスより製造されます。合成ガスはCOとH2で、
3CO+3H2→ CH3OCH3+CO2 (DME直接合成法)
したがって、@〜Eのどの資源からも製造可能です。また、Eのバイオマス、すなわち植物や蓄糞尿からの製造ですが、これらから生成されたメタノールの脱水反応から製造できます。
2CH3OH→ CH3OCH3+H2O (メタノール脱水法)
@〜Cは採掘可能年数が石油と比較し長く、特にCのメタンハイドレートは日本列島近海で今後約100年分存在するといわれており、また、Dはリサイクルの観点から、Eは地球温暖化防止となる二酸化炭素排出量削減に対して有効であり、これら多くの資源から製造できるDMEは、資源枯渇、地球環境問題の点からも将来的に有望な燃料であるといえます。
2.安価に製造できる
1.での製造が可能なことから、製造プラントの規模が大きくなれば比較的安価に製造が可能です。
3.汎用性がある
DMEには様々な用途に利用できる燃料として注目されています。
@火力発電
A民生利用
Bディーゼル燃料
C燃料電池
@の火力発電はエネルギー源の多様化という観点から重要であり、火力発電所用としては脱硫装置、集塵装置、灰処理が不要であり、また、ガスタービン(マイクロガスタービン)燃料としても利用でき、コンビニエンスストア等で自家発電として注目されているコージェネレーションシステムへの適応も考えられます。
Aの民生利用は、都市ガス用コンロでの使用が可能であるとの試験結果が出ているので、LPG以外の燃料として有望です。
Bのディーゼル燃料としては、自動車の有害排出ガス削減問題の点からも有望であり、また、直噴ガソリンエンジンにも噴射系の改良で使用できることから、自動車用燃料としても期待も高く、Cの燃料電池も実用化に向けて様々な研究がなされています。
4.人体および環境に対する安全性が高い
DMEのこれまでの主な用途は代替フロンとしてスプレー缶の噴射剤として使用されており、人体および環境に対して安全性の高い燃料であるといえます。また、常温常圧で気体ではありますが、現在のLPG、CNG車やプロパンガスなどと特性はほぼ同じであるため取り扱いの面からも安全です。
燃料性状の比較
- | 単位 Unit |
ジメチルエーテル DME |
軽油 Diesel fuel |
ガソリン Gasoline |
プロパン Propane |
ブタン Butane |
圧縮天然ガス CNG |
メタノール MeOH |
エタノール EthOH |
水素 Hydrogen |
Liquid density | kg/m3 | 667 | 831 | 750 | 500.5 | 578.8 | - | 795 | 789 | - |
Relative gas density (air=1) |
- | 1.59 | - | - | 1.52 | 2.07 | 0.56 | - | - | 0.07 |
Cetane number | - | >55 | 40〜55 | - | - | - | - | - | 40/50 | - |
RON | - | - | - | 98 | 112.1 | 91.8 | 120 | 106 | 107 | - |
Chemical structure | - | (CH3)2O | - | - | C3H8 | C4H10 | CH4+rest | CH3OH | C2H5OH | H2 |
Stoich.A/F ratio | kg/kg | 9.0 | 14.6 | 14.7 | 15.88 | 15.46 | 16.86 | 6.46 | 9 | 34.2 |
Boilling point | ℃ | -25 | 180/370 | 30/190 | -42 | -0.5 | -162/-88 | 65 | 78 | -253 |
C | wt% | 52.5 | 86 | 85 | 82 | 83 | 76 | 37.5 | 52 | 100 |
H | wt% | 13.0 | 14 | 15 | 18 | 17 | 24 | 12.5 | 13 | 0 |
O | wt% | 34.8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 50 | 35 | 0 |
Velocity of sound | m/s | 980 | 1330 | - | - | - | - | - | - | - |
Kinematic viscosity (liquid) |
cSt | <1 | 3 | - | - | - | - | - | - | - |
Modulus of elasticity | N/m2 | 6.37E+08 | 14.9E+08 | - | - | - | - | - | - | - |
LCV | MJ/kg | 28.8 | 42.7 | 43.2 | 46.35 | 45.72 | 49 | 19.8 | 26.4 | 120 |
Ign.limit | λ | 0.34/ | 0.48/ | 0.4/1.4 | 0.42/2.0 | 0.36/1.84 | 0.7/2.1 | 0.34/2.0 | 0.3/2.1 | 0.5/10.5 |
Vapor pressure | kPa 293K | 530 | - | - | 830 | 210 | - | 37 | 21 | - |
Mol.wt. | g/mol | 46.069 | 170 | 98 | 44.09 | 58.12 | 17 | 32.04 | 46.7 | 2.01 |
Min.Ign.energy | mJ | 0.29 | - | - | 0.305 | 0.38 | 0.32 | 0.215 | 0.65 | 0.019 |
Auto ignition temperature | ℃ | 350 | 250 | - | 470 | 365 | 650 | 450 | 420 | - |
Max.laminar velocity | m/s | 0.54 | - | - | 0.46 | 0.41 | - | - | - | - |
Heat of vaporization | kJ/kg | 467.13 | 300.00 | 420.00 | 372.00 | 358 | 510 | 1110 | 845 | 460 |
Gaseous specific heat | kJ/(kgK) | 2.99 | 1.70 | 1.70 | 1.67 | 1.68 | 2.2 | 1.72 | 1.93 | 1.44 |
梶谷修一、中山満茂:DMEを用いたディーゼルエンジンの可能性と問題点、自動車技術Vol.52、No.7、1998
梶谷修一:DME(ジメチルエーテル)燃料利用システムの研究開発動向、自動車技術Vol.55、No.5、2001
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Internal Cmbustion Engine Lab. 2004